12月03日 すいようび
表現力が完全に底を尽いた、漫画レビュー・・・


※ 微妙にネタバレを含んでいるので、気になる方は「戻る」ボタンをポチッとな。



「さてさて、12作品目となる今回は、ハロルド作石先生の最新作『RIN−リン−』を紹介していきたいと思います。」
「相変わらず、ペース遅いな。」
「表現力に乏しいんだから、仕方ないじゃないですか!!」
「え、いや、逆ギレされても・・・」
「ちなみに、今回の漫画レビューも、笑えない程の時間がかかりましたよ・・・」
「11作目となると、表現力のボキャブラリーが完全に底をついちゃってるもんね。」
「そんな底をついた状態で捻り出した『RIN−リン−』レビュー。 少しでも楽しんでいたら幸いです。」
「です。」
「それでは、またお会いできる日まで、さようなら。」
「次にお会いできるのは、いつになることやら・・・」

                





夢を追いかけ続けて、何が悪い!!!


人として生まれ、男に生まれたからには、誰だって夢を描く!!
夢を描いたことが一度たりともない男は、一人としてこの世に存在しないッ!!

それが心理だ!!!

だが、ある者は生まれてすぐにッ!
またある者は、更なる力のある者の実力に屈して
それぞれが、自身の夢を諦め、それぞれの道を進む。

しかしッッッ!!!
今夜あきらめなかった者がいるッッ!!



偉大なバカヤロウ!!!


この地上で誰よりもッ!誰よりもッ!!漫画家になることを飢望んだ男!!

本作品の主人公、伏見紀人、入場!!!


ハロルド作石 『RIN -リン-』 01巻     ハロルド作石 『RIN -リン-』 全巻


『RIN ‐リン‐』

作画 : ハロルド作石 (『月刊少年マガジン』 連載中)

伏見紀人の学園生活は退屈そのもの。
だが彼には「漫画家になる」という夢があった。

やってきた夏休み。渾身の一策を携えて憧れの講談社の編集部を訪れるも、評価はボロボロ。
落ち込む紀人だったが、夢にかける思いは衰えない。

一方、不思議な力を持つ少女、石堂凛。
彼女もまた、自分の居場所を見つけようともがく日々を送っていた。

紀人と凛、二人が出会うとき、壮絶な運命の扉が開く!!!


(作品紹介文章より)


『Beck』『ゴリラーマン』など、数々の名作を生み出してきた
ハロルド作石先生の最新作。

本作のジャンルを一言で表すならば、いわゆる『漫画家漫画』

これまで、あまり取り扱われる事のなかったこのジャンルは
『バクマン。』の爆発的な大ヒットによって、脚光を浴びる事となったのは記憶に新しい。

本作品は、その大ヒットを受けた後に書かれた、言ってしまえば二番煎じ。
不朽の名作『Beck』の連載が終了し、ハロルド作石先生の次回作を心待ちにしていたのに
その答えが、このようなで結果であった事が、正直残念で仕方ない・・・




と、読むまでは思っていました。




確かにジャンルとしては同じ『漫画家漫画』にカテゴライズされ
何かと『バクマン。』と比較されがちのこの作品ですが、ストーリー展開は当然の事
物語の軸となる視点や、それを取り巻く周囲の環境は、全く異なるベクトルによって描かれている。


そして、その圧倒的な熱量が半端ない。


ろくに読みもしないで、偉そうに評論していた5分前の自分を
思いっ切りブン殴ってやりたい程に、胸を熱くさせられる!!





おれには漫画しかないんだ!!

   


本作の主人公である『伏見紀人』は、漫画家を夢見る高校2年生。
それ以外は、何の取り柄もない平凡な高校2年生。

勉強や運動に秀でているわけでもなければ
ルックスが良くて女子からモテモテ・・・なんて事もない。
おまけに漫画の才能が突出しているわけでもない。

ただ、子供のころから、漫画が大好きで、漫画ばかり読んできて、漫画ばかり描いてきた。
つまり彼には『漫画』しかないのである。


だから、『漫画家になる』という夢の実現のために、己の全てをかける。



いい人生って何だと思う?

女にモテること・・・違う。
莫大な金を手にすること・・・違う。
いい大学に入って、いい会社に入って、いい生活を送ること・・・違う!!


漫画家になることさ!!!




ハロルド作石 『RIN -リン-』 伏見紀人
人生を懸けるだけの、価値がある夢


この感情を『青春』以外に何と呼べるだろうか?


漫画家になるという夢を追った一人の男が
文字通り、己の人生をかけた大勝負。

自ら退路を断ち、後には引けない状況下で、必死でもがき、必死で這い上がろうとする直向さに
胸が熱くならないわけがない。

それでは、そんな、全力で青春しちゃってるこの作品が
いかに素晴らしいかについて、熱く語ってみるとしましょう。


@ 日常の出来事を描いているだけなのに、グイグイ引き込まれる。

ただの日常の一コマが、言葉では表現することができない程の圧倒的な熱量を持っている。

前作『Beck』でもそうでしたが、本当に何気ない日常パートを描いているだけなのに
読み進める手が止まらなくなってしまうような描写や、表現力こそが、ハロルド作石の真骨頂なんだと感じる。

変に気取らず、ありのままの姿をさらけ出す主人公は、とんでもなく人間臭くて自然体そのもの。
だからこそ、全ての行動において、潔いまでに全力投球。

投稿した漫画が入選すれば全力で喜び、編集者にきつい言葉を浴びせられれば、全力で落ち込む。


     

一喜一憂。

無意識のうちに、紀人に感情移入させられてしまい
気付いた時には、すでにこの漫画の虜になっている自分に気付かされる。



     

紀人が聴いているCDが『BECK』の1stアルバムだったり、その他の場面にも遊び心が盛沢山で
ハロルド作石ファンなら思わずニヤリ。

さらには、愛知県名古屋市が物語の舞台となっているため
生粋の名古屋人の自分にとっては、地元の地名や、実際にその風景がバンバン描かれているので
気持ち悪いくらいにニヤニヤしっぱなし。

紀人が、高2の冬に、作中で将来を誓いに行った『熊野神社』なんて
完全に通勤経路にある神社だし

ヒロインである明日菜との、初めての待ち合わせ場所となった『栄のクリスタル広場』に至っては
初めて自分がカツアゲされた場所だと思い出し、涙が出っぱなし。





_| ̄|○





A 日常にスパイスを添える、脇役キャラ達がまたいいんだ。


登場するキャラクターは多いけれど、捨てキャラ何て一切存在せず。
脇役キャラ達にも、それぞれの想いや信念があり、全てのキャラからは、愛情しか感じない。


◆ 瀧 カイト

     ハロルド作石 『RIN -リン-』  瀧カイト

紀人と志を同じくする、新人漫画家。
弱冠17歳で、『沢村叡智賞』の大賞を、満場一致で受賞するなど、10年に1人の逸材とまで呼ばれ
同じ歳でありがら、実績も実力も紀人より遥かに上。

イケメンで生意気な性格でありながら、嫌味が全くない。
常に紀人の前を進み続ける存在でありながらも、互いに高みへと駆け上がっていくライバル。

「俺は全く負ける気はしないけどね。」



◆ カツオ

     ハロルド作石 『RIN -リン-』 カツオ

紀人の大親友。
全力でバカで、おまけに不細工。
でも、どこか憎めない。そんな愛されキャラの典型みたいな男。

行き詰った紀人に、絶妙なタイミングで遊びの誘いを掛けてくるなど
ライバル瀧君とは違った、紀人の成長には欠かす事の出来ない重要人物の一人。

「お前んちで、エアコン付けて、ダラダラしよーぜ。」



◆ 武藤さん

     ハロルド作石 『RIN -リン-』 武藤さん

講談社の編集者であり、紀人の担当者。
普段はチャラチャラしていて、適当な発言も多いため
一見。軽い人間に思われがちだが、プロの視点からのアドバイスは的確。

そのアドバイス通りに進むことで、めきめきと頭角を現してきた紀人。
ただ、本人の望まない方向へ、路線変更を強いられている事で
このまま信じて付いて行くべきなのか、紀仁の心の葛藤も描かれている。

「ぼくが君の担当をすることになったんで、よろしく!」



◆ 西口さん

     ハロルド作石 『RIN -リン-』 西口さん

同じく武藤さんが担当している漫画家。
紀人にとっては、頼れる先輩であり、よきアドバイザー。

27歳になって、沢村賞の『最優秀新人賞』を初受賞。
遅咲きではあるものの、漫画に対する情熱はこの作品でも随一。

「下には下がいるって事がわかって、テンションが上がったぞ。」



まだまだ挙げればキリがないほど、全ての登場人物が、愛すべき漫画バカたちなのである。


そんなキャラクター達が織り成すドラマが、面白くならないわけがない!!




     
可愛すぎるヒロイン’s


B 登場するヒロインの可愛さたるや。


ハロルド作品の真髄と言えば、可愛すぎるヒロインもその一つ。
そして、どの作品においても、主人公に対して大きな影響を与えていくヒロイン。


◆ 本多 明日菜

     ハロルド作石 『RIN -リン-』 本多明日菜

紀人の同級生であり、彼が密かに思いを寄せている
運動神経抜群のヒロイン。

恋に奥手な紀人を、グイグイとリードしていく。
それが天然なのか、それとも意識的なのか、その真意は不明であるものの

こうやってリードしてくれる女子に、痺れる、憧れる!!



◆ 石堂 凛

     ハロルド作石 『RIN -リン-』 石堂凛

可愛すぎるっちゃ。

振り向きざまの笑顔+方言=ただの天使

天使。ただの天使。マジ天使。
『天使』という言葉しか思い浮かばないメインヒロインの凛ちゃんは
生れながらにして特殊な霊感が備わっており、いろいろと見えてはいけないものが見えてしまう。

その特殊能力の存在が、この物語の厚みを
二重にも三重にも大きくしていく。



ハロルド作石 『RIN -リン-』 沢村叡智


漫画界の巨匠、沢村叡智が死ぬ直前に書かれた日記。
その最後に書き残された言葉、『トーラス』・・・


漫画の神様と称された、沢村叡智が死の直前で遺した謎の言葉。
果たして、この言葉が何を意味しているのか
そして、その言葉が導く未来の先に、待ち受けている真実は一体何なのか・・・


     ハロルド作石 『RIN -リン-』 トーラス

それは、凛が予言するとおり、『最後に描こうとした漫画のタイトル』なのか・・・
それとも、全く違う意味を持つ言葉なのか。

謎が謎を呼ぶ展開は、第6巻から始まる『新森祭』編
さらに加速していく。


物語はまだまだ序盤。
これから、さらに深く、そしてさらに面白くなっていくストーリーからは

名作の匂いしかしない。





読者って、常識が見たくて漫画を読むワケじゃない。
非常識でも、本人が信じてるなら、それが真実。

もしかして、目に視えない世界のものに言い分を認めた方が
世の中が立体的に浮かび上がってくるのかもしれない。


By.瀧 カイト



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